インドのプリント綿は、色落ちに注意
現在、35歳の主婦です。私は神奈川県の田舎の出身なのですが、中学生の頃に初めて横浜の中華街を訪れ、そこで出会った「チャイハネ」というお店のテイストに心酔してしまいました。現在こそ全国のショッピングモールなどで支店を見かけますが、当時はまだ中華街の本店しかなかったはずです。
エキゾチックなテクスタイルを利用した衣類や小物に私は胸をときめかせ、たびたび訪れてはファッション小物を購入していました。そして大学生になった時には、毎日のコーディネイトに必ずインド綿アイテムを取り入れるような、エスニックファッション大好き女子になっていたのです。
インド製の衣類は冷水で手洗いをする
こういったインド製のプリント生地は、華やかではっきりしたモチーフと色合いが魅力です。母は「でもねえ、こういうのって色落ちしやすいから、まず最初に洗う時は桶で冷水・手洗いしてみた方がいいわよ~」とアドバイスをくれたのです。それを従順に受け、私はインドものの衣料は必ず冷水で手洗いをしていました。実際、洗い桶の水がビビッドな色になってしまうことが多く、「ヒエー、こりゃ洗濯機は絶対ダメだ!」と思っていたものです。
そんな風に気を使っていた私ですが、ある時罠にはまったことがあります。同じく横浜のファッションビルにて買い物をしていた際、かなりエスニックテイストの高いワンピースが目に留まりました。まあ素敵、と思って表示タグを見ると「日本製」とあります。30度までの洗濯機可、とも書いてあり、「最近はこういうテイストのワンピも、日本で作るんだ…。まあ日本製なら色落ちしないだろうし、洗濯機で洗っていいと言うならできるんだろう。」と少し驚いたものの、そのワンピースを購入したのです。白地に赤いプリントが鮮やかな、かわいらしい綿のワンピースでした。
日本製のワンピース。冷水で手洗いした水に色落ちしてなかったので安心
さて帰宅後、私はこのワンピースを一度洗濯することにしました。新しい衣類は、必ず一度洗ってから着る主義なのです。洗濯機可、とはあるものの初回ですから慎重に、今までのインド綿もののように「冷水で手洗い」方式を取りました。その際はほとんど色落ちも見られなかったため、私は感心したのです。「ああ、やっぱり日本製のインドモチーフ綿なんだな。染色がしっかりしてあるから、色落ちも本当に全然していないや。」と安心しました。
そして数回チュニックのように着まわしたあと、洗濯機に入れて洗濯したのです。ネットに入れ、表示通りに低温で素早く回しました。洗剤は当時から使用していた、ごく一般的な「洗濯用粉せっけん」です。
…が。干そうとして手に取った際、私は目を見張りました。見事に、色落ちしていたのです。幸い、私がその際に一緒に洗濯機に入れたものは暗色系の衣類ばかりだったので、他の服への影響は全く見られませんでした。ですが、「白地に赤いプリントが鮮やか」だったワンピースは、赤い部分の色が溶け出し、白地部分がピンクに染まっていたのです。
私は濡れたワンピースを手に、しばらく茫然としていました。考えられることは、一度目の手洗い洗濯でどうにか持ちこたえたプリントが、2度目になってゆるく溶けだしたのでは、ということです。そしてこのワンピースは「インドから輸入した綿を使って、日本で裁断された」製品だったのでは…?と思えました。私がもう少し頭の固い人間だったら、即メーカーにクレームをつけていたことでしょう。ですが、私はしげしげとワンピースに見入りました。
「うむ、ピンク地に赤いプリントが鮮やかな、そういうワンピースだと思うようにしておこう。」と一人うなずいて物干しに吊るしました。
実はそれからもう15年ほどになるのですが、今でもこのワンピースは愛用しています。5年目を過ぎたあたりからは全体の色合い自体が薄れてきたので、ほとんど色落ちもしないのですが、それでも冷水でささっと手洗いする、という方式を取り続けています。色落ちしても気に入っているものなので、本当にすり切れてダメになるまで大事に使いたいと思うのですが、「物持ち良すぎ…」と周囲に言われることがよくあります。